意外や意外
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 



急な寒波が襲い来て、
12月どころか1月下旬から2月の、
真冬並みという寒さに震え上がってる日本列島であり。

 「何でこうも極端から極端へ。」
 「ホントですよね。
  何事もほどほどの中庸が一番だというのに。」

クリスマスの計画も立って、
ナイショの部分も含めての、
お楽しみを前に、胸中はルンルンだったはずが。
この寒さって何ゴト?と、
仲のいいお友達同士、可愛らしいお顔を不服そうにし、
ぶうぶうとご不満を並べておいでのお嬢さんが二人ほど。
日頃通う女学園と同じほど、すっかり通い慣れた道を、
もう一人のお友達のお家へと いそいそ向かっているところ。
クリスマス・イブという特別な宵は、
一番仲のいい3人で過ごすと決まったものの。
そこへ至るまでの丸々2週間もある、
お休みすべてを費やして準備…というほど大仰なもんでなし。
それにそれに、
彼女ら個々人の予定というのも
案外とあれこれ待ち構えていたので。
期末考査が終わってからの数日ほどは、
計画を練りがてら、睦まじくも行動を共にしていたものが。

 『お父様の付き人として京都まで。』
 『お爺様がアメリカから3D交信の実験をするというので。』
 『バレエの春公演の顔合わせが…。』

そんなこんなという事情が各々に発生したがため、
唐突にふいっと、
顔を合わせるどころか、メールのやりとりも侭ならぬ慌ただしさへと、
それぞれが引っ張り込まれた格好になってしまい。
まま、こんなこともあらぁなと、
苦笑しこそすれ、音信不通になってもさほど焦りはしないまま、
自身へ降って来た“お務め”をきっちり果たして、さて…と。
やっと身が空いたとあっての今日は、
大人たちに取り囲まれてて窮屈だったの癒すべく、
仲良し3人、数日ぶりに顔を合わせて だらだらしましょと。
前半はともかく 後半は微妙に他人には聞かせられない主旨の下、
そんな大笑いな顔合わせにと、
三木さんチへと向かっていた白百合さんとひなげしさん。
それぞれ、お出掛けしまくりの数日を過ごしたので、
気丈ながらも…実は肩がこってたの、言わずとも判ってくれる、
気の置けない、気心の知れた顔触れと一緒に居たくなったものの。
そんな当日になった途端のこの寒さってどうよと、
イヤーマフやらネックウォーマーやらに、愛らしいお顔をくるみ込み、
時折 吹きつける風の冷たさに きゃあきゃあとはしゃぎつつ、(……ん?)
寒いが陽あたりはいい週末のお屋敷町を、健康的にも歩んでのご訪問。

 「………vv」

今年はクリスマス由縁の公演への出演予定はないらしいものの、
各地主要都市で催される春公演への取材陣に取り囲まれたり、
ホテルJへも、贔屓のお客様の要望でお顔を見せにと伺ったりが続いたそうで。
寡黙で内気な紅ばらさんが、きっと一番気疲れしたろうからと、
それを励ますというのが一応の名目の集まりだったが。
門扉に迎えられてからも少々歩んでののちに辿り着いた先、
白亜の洋館の正面、
アーチに支えられた屋根つきの車寄せというアプローチポーチを上がれば。
そこだけでも十分な広間並みのエントランスホールを背景に、
可愛がっておいでのメイクーンちゃんを抱えて立つ少女が、
二人のお友達をお出迎えにと出て来ておいで。
スムースジャージか、タートルネックのシャープなインナー、
シンプルなエプロンドレスに黒地のクロップパンツを合わせていて、
いかにも厳粛な家庭の内気な令嬢風のいで立ちだったが。
それでも覆い切れぬほど、華やかさという花を添えているのが、
柔らかなくせのある、ふわふわした金の髪の軽やかさと、
白いお顔の透徹玲瓏な端正さ。
バレエで引き締められた痩躯は、
どれほど簡素に装っても、
そのシャープな麗しさと存在感とで人の眸を引いてやまないが、

 「…シチ、日がいいぞ?」
 「はい?」

大層なコートを脱ぐので待ってと、
メイドさんに手伝ってもらいつつもすったもんだしている大好きなお友達へ。
お留守番に飽いた幼子の、最後のお預けのようなお顔になるかと思いきや、
そんな謎めいた一言を投げかける彼女であり。
お疲れさんと ギュウvvをしに来たはずが、
先を取られたとキョトンとした白百合さんの傍らから。
ダッフルコートを脱ぎ終えて、
くうちゃん お久〜vvと、
やや大きめの猫さんを さっそくハグしにかかったひなげしさんが、

 「あ…。」

そのお言葉の詳細へ、これまた七郎次より先に気がついた。
ロビーのようなホールへ上がったからこそ、
そこから望めた中庭のサンルーム。
陽射しだけなら目映いほど明るい今日なので、
寒風をしのげさえすれば暖かいほどなのだろう
強化ガラス張りの空間には、
小さめのテーブルを挟んで二人ほどの人物が向かい合っているらしく。

 「お爺様、お越しだったのですね。」
 「ああ。」

久蔵お嬢様をいたく可愛がっておいでという、
彼女の祖父にして、三木コンツェルン総裁様とそれから…。

 「……………え?////////」

結構な恰幅のある総裁様と向かい合い、
精悍なお顔の顎先へとたくわえたお髭、
時折ごしごしと指先で撫でておいでのもう一人。
かっちりした肩や広い背中へまで至る長さの、
うねうねとしたくせっ毛もそのままに、
何事かを考え込んでおいでのそのお人こそ、

 「勘兵衛様?」

白百合さんが前世から引き続きての慕ってやまぬ、
警視庁の敏腕警部補殿ではないかいな。

 「あ…でも何で?」

いくら愛しの君であれ、
今日のスケジュールなんてわざわざ知ってはなかった七郎次。
こちらのお宅へ怪盗から予告状でも届きましたかと、
嫋やかなお顔を傾げたのへは、

 「……………………vv/////////」

何をトンチンカンなことを言い出すかと思った思考をするするっと追い抜いて、
そのお胸へずぎゅんと来るほど“可愛いvv”と感じた萌えが勝
(まさ)ったか。
結構 冷静な性分でもある久蔵お嬢様が、
一瞬言葉を失ってから、はうぅ〜と頬染め、
大好きなお友達をギュウvvしてしまったほどであり。

 「…どっちが何しに来たやら、判りませんな、こりゃ。」
 「にいvv」

キャラメル色のちょみっと大柄な猫さんを抱えたまんま、
苦笑を浮かべたひなげしさんへ、
くうちゃんまでもが同調しちゃったひとコマでありました。




       ◇◇◇



 「おお、おお、これはまた。
  綺麗どころがお揃いですかな。」

三木コンツェルンの総裁は、
業界や一族の中では“マロ様”で通っておいで。
というのも、どこか雅な物言いをし、
はんなりしんなりと和やかな雰囲気を常に醸した人物であり。
お顔から体格から、お餅のようにふくよかな、
所謂“ぽってり”した風貌をなさった御仁だが。
これでも その身ひとつの裸一貫で、
日本が誇るコンツェルンを築いたという、
昭和最後の、いやさ平成最初の大立者とも言われておいで。
俗に言う“権謀術数”も、
多少どころじゃあなくの こなしておいでであろうに、
そうとは到底思えないよな、
のほのほと穏やかな風貌なものだから、
コンツェルンの看板であるホテルJの、
アニバーサリ・イベント各種にも、
必ずお顔を出しては来賓らを沸かせておいでの立役者でもあって。
そしてそして、

 「じさま。」

表情乏しい紅ばらさんが、
だってのに…口許をうにむにとたわませてと、
見るからに含羞みつつも駆け寄ったほどのお気に入り。
祖父殿がふくよかな巨体を沈めておいでのソファーの間際まで運び、
彼とそれから、彼が立ち向かっておいでの盤面を見やるので、

 「おお、久蔵か。
  きょうは ちいと苦戦しておる。」

ほほと笑ったその前には、ローテーブルに置かれた碁盤と、
白と黒、つやつやな碁石を満たした、蓋つきの入れ物とが配置されており。
そしてその先には、

 「〜〜〜〜。//////」

日頃の闊達な凛々しさはどこへやら、
思わぬ拍子に逢うことが叶ったお人の姿に、
視線が釘付けになったまんまの白百合さんの様子へ、

 「なんて顔をしておるか。」

何も言い置かず家出していた身内にでも逢ったかのような。
そんなほどにも、
切なげなお顔になっている彼女なのは何故なのか。
他でもないご本人が重々承知なればこそ、
苦笑が浮かんでしょうがない、勘兵衛殿なのであり。
これは後で聞いたのだが、
なんと警部補殿ったら、
こちらの総帥殿とは“ごがたき”なんだということで。

 『ごが…?』
 『碁敵ですよ、シチさん。』
 『…、…、…。(頷、頷、頷)』

囲碁の勝負仲間といいますか、
そういう間柄のお友達のことですよと説明したのが
アメリカ育ちの平八だというのも何だか妙なもので。

 『そうですね、
  私はどっちかといやオセロかチェスの方が好きですが。』
 『俺は将棋。』

ああそういえば、意外にもシチさんは
あんまり将棋をご存知じゃあなかった…というのは、
すいません、ウチのカンナ村設定ですので悪しからず。
(苦笑)

 「おお、草野家のご令嬢と懇意であったかの。」

だったら、このような野暮なものなぞ捨て置かれなされと、
ほこほこ笑っての投了を促すマロ様なのへ。
ますますのこと、苦笑を深める警部補殿であったのだけれど。

 「なに、囲い込まれたのは吾の方。
  手の者を後日にでもお伺いさせようから。」

何かしらの問い合わせか、
それとも内密でご協力をとの打ち合わせだったのか。
曖昧にぼかしたその上で、
了解しましたとの意を告げる総帥様だったようであり。
愛しくも大切な、うら若き恋人さんへ連絡の1つもしないまま、
だってのに…職務上の必要かららしいとはいえ、
彼女のお友達の家へと訪のうていた罪作りな警部補殿。
ここは色々と周囲に救われた格好になったようである。




      ◇◇◇


ああまで印象的で特徴も濃い人物だってのに。
しかもしかも、
前世ではその傍らにいて、用心棒を務めてさえいた久蔵だったのに。

 「なのに、思い出してないのが不思議ですよねぇ。」

こちらはお顔を見ただけで“ああ〜〜〜っっ”と指差しそうになったほど、
そりゃあ あっと言う間に思い出したし、
あちらさんの方でも、

 『もしやして、あの頃の頼もしい顔触れの生まれ変わりかの?』

久蔵お嬢様が座から離れた隙をつき、
向こう様からも こそりと確認を取って来た、
あの、前世で皆がまみえた騒動の、
途中まで敵方だった、虹雅渓の差配・綾摩呂様を、
一番すぐ傍にいて、
しかもしかもあの兵庫せんせえとよりも、
長きに渡るお付き合いもしておいでだというに。

 『ああ。
  久蔵の側からは いまだに思い出せぬままらしくてな。』

これもまた、久蔵本人には内緒のまんま、
平八や七郎次へと伝えたおり、
何とも言えぬお顔になった、榊せんせえだったりし。

 『思い出せないからか、
  それとも自覚もないままながらも何か嗅ぎ取っているからなのか。』

自身の起こした事業の創成期からこっち、
彼女の両親にもさんざん手伝わせ、
久蔵を孤独な童女とし、寂しくさせた張本人だってのに。
家族の中の誰よりも好きだと懐いておってなと、
しょっぱそうな笑顔を見せた兵庫殿だったが。

 “…うん、そうだね。”

何かこう、笑えることなんだよねと、
七郎次と二人、しみじみ頷き合ったのを思い出すひなげしさん。
笑うといっても、
滑稽だと思うのではなく、皮肉だなあと呆れるのでもなく。
強いて言えば、何ともほのぼのとした感慨に胸がすく。
ああまで苦しかった時代を生き、
壮絶で悲しい別離を味わった顛末の、言わば続きのような顔触れだのにね。
辛かったこと、当時は息を詰めてこらえてた色々が、
片っ端から良い方向へと昇華され、
あるいはやり直しが利くようにと取り揃えられてるような。
そんな甘酸っぱい幸せに感じられてしまうのは、
私たちが相変わらずお気楽な性分だからでしょうかしらと。
額をくっつけ合って微笑った時のお相手は、
師走に入ってからどころか、もう一カ月も逢ってないままだという、
前世もそして今世でも愛しいお人と、
仲睦まじくも連れ立って、こちらのお庭を散策中。

 「おもしろい奇縁があったものですよね。」
 「…、…、…。(頷、頷、頷)」

勘兵衛もまた、
あの元・差配との再会には何とも言いがたい想いがしたのだろうか。
そんな意味合いもあっての、そんな言いようをした平八だったのだが。
お邪魔はしませんと
お嬢様のお部屋から遠目に睦まじさを見やっておいでの現状から、
勘兵衛が今日この屋敷へ来合わせていたことをのみ、
口にしている彼女だと思ったらしい久蔵であるのも明白で。

 “…まだまだこの先、楽しい波乱も待ってそうですよねぇ。”

どこか幼いというか、
純真無垢な元・双刀使い殿の更なる覚醒とか、
ああ他にも色々と、
それこそ私が気づいてないものもあるやも知れぬと。
うふふんと楽しそうに微笑ってしまうひなげしさんであり。


  はてさて、どんな師走になるのやら、
  そして、どんな新年が訪れる皆様なのやらでございます。





   〜Fine〜 11.12.17.


  *さすがにそろそろ、
   あちこちの片付けもあり、
   落ち着いてお話しをひねりにくい気配となりつつありますが。
   それこそ隙をついての小出しに、
   ちみちみっと書くことと思われます。
   大掃除や年賀状書きなどの息抜きにでも、
   お立ち寄り下されれば幸いですvv

ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

メルフォへのレスもこちらにvv


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